DAY33

──どうしたらいいのか
どうしてそうしたのか

なにも、なにも、わからなかった。


船の上でもみあうふたりの姿をみて
どうしてだろう
どうしようもなく、どうしようもなく
こころがざわついて。平気ではいられなくなって。
船をさらって、ふたりを離した。


どうしてこころがざわつくのか、わからなかった。
どうしてそうしたいとおもったのか、わからなかった。


──だけど、それから。
やっぱり、どうしたらいいのか、わからなくって



────そうするしか、できなくって。


それが、まちがってなかったのか、わからなかった



だけど、それでも

──あのひとを、ひとごろしにだけ
したくないと思った──





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ハンス
「…………う……。」




ふと、目が覚めて
意識のあることに気がつく。


穏やかな日差しと波の音にぼんやりと
空を見上げて、いくらか混乱するように瞬きをした。


気がつけば、浜辺に寝ていた。
波に濡れない場所まで上げられているのを見れば
打ち上げられた、のともまた違うのだろう。

誰かにここに寝かされていた。


昨晩に自身の身に起きたことを思い出そうとして、頭が痺れる。

ぼんやりとした意識の霧に遮られて
すべてを思い出す事はできなかったが
緩やかに呼吸をして、どうやら息が繋がったことだけを知る。

しかし、どうして、再び目を開くことができたのだろうか。
考えようとしては、意識が霞みそうになり、諦める。



気分が悪かった。

重い貧血症のように脳に白く靄がかかり
手足の動かし方を探るようにしながら身体を起こす。


身体にずっしりと鉛が詰まっているような気がした。
喉の奥に血の匂いが溜まっていて
そこに海水の腐ったようなものがつかえているような気がして、2、3回咳き込む。

身体を動かすそのたびに
ぐらりと頭の中が撹拌されるような気分がした。



ふと思い、あたりを見回すと
少し離れた場所に倒れ込むヤグヤグの姿を見つけて
何度か膝をつきそうになりながら駆け寄る。

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ハンス
「ムロジャフ博士……」


名を呼んで彼の身を覗き様子を見れば
意識こそ無い様子だったが、どうやら命に別状は無い様だった。


彼が無事であったことと、今はまだ眠っている事に、
口には出さず安堵する。

今、彼が目を覚ましたのなら
どのような顔をして、なんと声を出せば良いのか、わからなかった。



波打ち際に着いた船の破片を目にして
ひとまずここを離れ拠点に戻るべきであると考える。


転びそうになる身体をどうにか支えてヤグヤグを背に負うと
不確かな足取りで拠点の漁師小屋を目指す。




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ハンス
「…………あ、れ。」


その途中で、違和感に気がついて身体を見る。


──昨晩に貫かれたはずの背の傷が、塞がっていた。



それは、決して一晩に塞がるような傷ではなかったはずと
考えをめぐらそうとするが
思考を試みれば意識に霧がかかり、それ以上は放棄した。



──喉の奥にまだ、海水の腐ったような臭いがする。


今は、なによりも早く拠点に戻り、ひとまず体を横たえたい。



ふらふらと、二人分の身体を引きずり。浜を離れて小屋へと向かった。







  • 最終更新:2018-02-18 14:18:12

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